劇団「どくんご」観劇(人によってはネタばれだよおぉ!)

劇団どくんごの「ただちに犬」を井の頭公園で見た。久しぶりのテント芝居の観劇。
三鷹から歩いて井の頭通りにぶつかる。そのままバス通りからジブリ美術館の裏手に回ると鬱蒼とした木立の中から聞こえてくるジェネレータ-の音、そして作業燈に照らし出されるテント。。。もうそれだけでワクワク。。。


劇場演劇とは540°(360°+180°)反対に位置する劇団だと思う。かつてのイデオロギーを剥き出しにした荒ぶる男根主義天皇ヒロヒト首チョンパテント芝居ともはっきり一線を画した母なるテント芝居。平成の大衆演劇の模索?駄菓子屋テント芝居とも言える。
象徴的なのは、この劇団の中心が人ではなく一体の「いぬ」。かつてのテント芝居には、反権力や反天皇制、反差別などのイデオロギーとしてはっきりと民草(弱きもの)に対する〝敵〟を実体として中心に置いていたが、この芝居の中心にあるのは〝いぬ〟、時に物言わぬいぬのぬいぐるみ。つまり〝居ぬ〟なのか?だからメンバーは、この〝いぬ〟=虚空、虚、フィクションetcとにかく実体なきものの周辺で必死に実体を現そうと変化する。一見バラバラに見えるシーケンス(役者それぞれが自主稽古で生み出したと思われる場面)を有機的に繋いで紡いでいくことで駄菓子屋的遊戯空間が現れ、そもそも神出鬼没なテント空間と相まってもうそれだけで存在としての強さを放っている。

内容(物語性)や演技に関しては好みがはっきり分かれると思う。実際、自分もテント芝居特有の押しの強い演技には好ましいところもあったが一本調子で飽きるところもあった。シーケンスのつながりなので、はっきりした物語は無いのでそこに物足りなさもある。とはいえメンバー全員での演奏の楽しさ(一生懸命さ)や音楽性の確かさはとても良い。

とにもかくにも現在、全国をテント巡業する唯一の劇団で、七人という精鋭メンバーだけで旅して芝居を行うというその存在、芝居に対する「腹の決め方」その在り方だけでも一見の価値ありだと思う。


間断なくテントを打つ雨音、したたり水たまる雨だれ。雨の中でのテント芝居は非常に風情があって良い。